広田+二口企画の日々

京都を拠点に活動する俳優・広田ゆうみと二口大学。
2019年、別役実作品の上演を5つの町で行いました。
2020年は、別役実「眠っちゃいけない子守歌」で京都・三重・松山に、別役実「いかけしごむ」で長崎にお邪魔いたします。
二人の出演情報や近況報告などアップして参ります。

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今年も、別役実作品でツアーを行います。
3月に惜しくもこの世を去った別役実さん。
三重県津市、愛媛県松山市、京都市と公演させて頂きます。
足をお運びいただけましたら幸いです。

広田ゆうみ+二口大学「眠っちゃいけない子守歌」2020ツアー

三重公演 於 津あけぼの座【公演終了しました】
6月20日(土)19:00★ 21日(日)14:00
★アフタートーク開催 ゲスト:松原豊さん(写真師・Office369番地)

松山公演 於 シアターねこ
8月7日(金)19:30 8日(土)14:00★/19:00
★アフタートーク開催 ゲスト:本坊由華子さん(世界劇団)
チケット予約受付中!
松山公演チケット予約へ(クリック)

京都公演 於 人間座スタジオ
10月30日(金)19:30★ 31日(土)15:00/19:00
★アフタートーク開催 ゲスト:筒井加寿子さん(ルドルフ)
※4月から延期となりました。

また、長崎・アトリエPentAにて、ペンタの日2020に参加、「いかけしごむ」を2021年3月上演予定です。
こちらも追って情報を掲載いたします。

『眠っちゃいけない子守歌』三重公演 無事終了しました。
このような状況の中で劇場へ足をお運びくださいました皆さま、まことにありがとうございました。

(少しは緩んできたとはいえ)ひとと直接話すということが忌避されるこの事態の中で、ただひたすらに「話をする」この作品は、どのようにご覧いただけただろうか、と思います。
デバイスを介した情報のやりとりではなく、「面と向かって」対話するということ。言葉の手ざわりや、そのひとの気配。伝わるということだけでなく、伝わらないというもどかしさや、わかりたい/わかってほしいという希望や、決してわかりあえないという絶望をも含めての対話。
ひとは、かろうじてわたしでありながら、わたしではないひとと関わらざるを得ない、それはとても苦しいことでもありますが、そこにはやはり(かすかな)救いや喜びもあるのだと、当り前のことのようですが、改めて思います。

この公演は、津あけぼの座再開の公演となり、いつものように、久方振りに、初めて、遠方から、様々な方がお越しくださいました。
開演前のざわめきが、いつもより人が少ないにもかかわらず、いつもより熱と活気にあふれていました。
そして、終演したとき起こった分厚い拍手は、この舞台に頂いただけでなく、津あけぼの座に、演劇という営みに、そこに集ったすべてのひとに、捧げられたものだったのだと思います。
劇場は、演劇は、こんなにも待たれていた。
この拍手をきっと忘れないと思います。

いつも引く別役さんの『小さなもうひとつの場所』……ではなく、こたびは『ナルニア国物語』から──魔女が支配する地下の暗闇の国で、主人公らが「地上の世界などない」「太陽などない」と説きつけられて気力を失わされてゆく場面があります。魔女は、ここだけがこの世で唯一の「ほんとうの世界」であり、主人公らの知る世界は「ただの、うそっこ」「ままごと遊び」だと言うのです。それに対して、一人が力を振り絞ってこう言います。「あたしらは、おっしゃるとおり、遊びをこしらえてよろこんでる赤んぼ、かもしれません。けれども、夢中で一つの遊びごとにふけっている四人の赤んぼは、あなたのほんとうの世界なんかをうちまかして、うつろなものにしてしまうような、頭のなかの楽しい世界を、こしらえあげることができるのですとも。」

『眠っちゃいけない子守歌』は、次は8月、シアターねこへ参ります。こちらも劇場再開の公演となるようで、身の引き締まる思いです。
予断を許さない状況ではありますが、無事にまた劇場でおめもじかないますよう。

広田ゆうみ

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(撮影:松原豊)

この戯曲の台詞に、今はもう存在しない国の名前が出てきます。
国がなくなる、ということは、現代この国で生まれ育った私にはなかなか実感がもちにくいことで、わずかに、いつか観た映画のラストシーンが思い起こされるばかりです。大地から切り離され、遠ざかってゆく島。あまりにもあかるく歌い踊る人々。

十七まで育ったところを、離れてずいぶんしてから訪れたことがあります。
その頃から人口が増えつつあった街ですが、やはり劇的に変わっていました。
おばけが出る笹藪も宇宙船が来る田圃も消え、天への橋が架かる山も見えなくなって、不死身の鮒がいる川だった路を、新しい学校に通う子どもたちが駈けてゆきました。
ごくありふれた変化です。
子ども時代の多くを過ごしたというだけで、さほどすてきな街だったというわけではありません。
それでも私は、思いがけないほどの喪失感に襲われていました。

切り離され、遠ざかってゆく。
そのようにして、そのとき私も、私の中の国をひとつ喪ったということなのかもしれません。
しかし、その国はきっとまだどこかにあって、私は今もそれを探しているような気がします。
「眠っちゃいけない子守歌」という少し奇妙な題をもつこの作品も、もしかしたらその道程のひとつなのではないかと思います。

そんな道程にあるひとに、それはおそらくすべてのひとではないかと思うのですが、この作品を捧げます。

広田ゆうみ

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